東京高等裁判所 昭和53年(う)40号 判決
被告人 森岡剛
〔抄 録〕
被告人のように、身体におけるアルコール保有量につき、その科学的検査を拒否している場合、政令で定められた程度のアルコールを身体に保有していたか否かについては、必ずしも検知器その他特別のいわゆる科学的検査によって判定する必要はなく、飲酒量、飲酒状況、飲酒後の経過時間、運転直後の言語、行動、身体的特徴等の外観的観察等から経験則によって認定することができるというべきである。ところで、本件にあっては、前記説示のように、被告人の飲酒量、飲酒後の経過時間が明確でないため、及川智正作成の鑑定書により、あるいは、いわゆる上野式計算方法による計算式を用いて、被告人の本件時におけるアルコール保有量を算出することはできない。しかしながら、被告人は、前記のように、昭和五二年六月一〇日午後五時三〇分すぎころから同日午後七時三〇分ころまでの間にビール大ジョッキ二杯を、同日午後七時三〇分過ぎころから翌一一日午前零時三〇分ころまでの間にウイスキー若干量をそれぞれ飲んだこと、その後同日午前零時五〇分ころから同日午前一時五二分ころまでの間公訴事実第一(訴因変更後の事実)記載の各地点を経て東京都板橋区小豆沢一丁目一三番地先付近路上まで普通乗用自動車を運転したが、同地点において、被告人は前記(三)で認定したように、強い酒臭を発し、目を充血させ、通常より大きな声で取調べに当った警察官に対し「責任者を出せ。」などとこもごも申し向けて反抗的態度を示し、アルコール検知を拒絶したこと、が認められるのであって、これらの事実を総合すれば、本件当時における被告人のアルコール保有量が呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上であったことは、経験則によって十分これを推認することができるといわなければならない。
(堀江 森 中野)